喫煙はインプラント周囲炎(インプラント周囲の炎症や感染)のリスクは?

~歯と食べ物で健康に~
今回も前回に引き続きインプラントの投稿です。
喫煙はインプラント周囲炎(インプラント周囲の炎症や感染)のリスクを大きく高める要因の一つです。いくつかの理由で、喫煙はインプラント手術の成功率を低下させ、インプラント周囲炎の発生率を高めます。
喫煙がインプラント周囲炎に及ぼす影響
- 血流の減少: 喫煙によって血管が収縮し、口腔内の血流が悪くなります。これにより、インプラント周囲の歯茎や骨組織への栄養供給が不十分になり、治癒が遅れることがあります。
- 免疫機能の低下: 喫煙は体全体の免疫力を低下させ、感染に対する抵抗力を弱めます。その結果、インプラント周囲の組織が細菌感染を起こしやすくなります。
- 骨結合の阻害: インプラントが骨と結合するプロセス(オッセオインテグレーション)を喫煙が妨げることがあります。骨とインプラントの結合が不十分だと、インプラントの安定性が低下し、周囲炎を引き起こす可能性が高まります。
- 歯肉の炎症と組織破壊: 喫煙は歯肉に慢性的な炎症を引き起こす傾向があり、歯周病やインプラント周囲炎のリスクを高めます。また、インプラント周囲の組織がダメージを受けやすくなるため、炎症が進行しやすくなります。
- バイオフィルムの形成: 喫煙者は口腔内に細菌のバイオフィルムが形成されやすく、このバイオフィルムがインプラントの表面に付着することで周囲炎のリスクがさらに高まります。
と関係性がうかがえます。しかし、実際、文献上でインプラント術前術後の推奨の禁煙期間ついては触れたものは多くはありません。Bainらの報告では、インプラント手術前1週間、術後8週間の短期間禁煙を行なった群は喫煙し続けた群と比較してインプラント失敗のリスクが下がったといいます(Bain CA, 1996)。また医科のガイドラインには、術前2-4週間の短期であっても禁煙した方が失敗・併発症のリスクが下がるというデータが出ております。
私の学んでいた東京医科歯科大学インプラント外来では禁煙について「少なくとも手術2週間前までに禁煙の徹底」を推奨しています。
天然歯では、喫煙期間が長ければ長いだけ歯周病のリスクは上がり、禁煙期間も長いだけ効果があるといわれております。禁煙して約11年で歯周病に対するリスクが非喫煙者と同等になるという文献もあるので参考にしていただけたらと思います(Tomar SL & Asma S, 2000)。
また最近増えてきたニコチン含有の電子タバコについてもPlaque Index、ポケット深さ、BOP、XPでの骨吸収量が非喫煙者と比較して有意に高いと出ているため注意が必要です(AlQahtani MA, 2018)。
結論
喫煙者はインプラント周囲炎のリスクが非喫煙者よりも高いため、インプラント治療を受ける際には喫煙を控えることが強く推奨されます。もしインプラント治療を検討している場合は、禁煙することで治療の成功率を高め、長期的に健康なインプラントを維持できる可能性が高まります。
ご覧になっていただいたとおり、喫煙とインプラント周囲炎については現在も多くの文献が出てきています。身体のためにも、お口のためにも、禁煙について取り組むきっかけを患者さんに作ってあげたいです。
山武郡東金市の歯医者鈴木歯科医院では基本的に禁煙をしてもらった状態でインプラントに臨んだ方が安全であるとお伝えしております。